歌舞伎の舞台名所を歩く

  新大橋
『茲江戸小腕達引』


 (1)

河竹黙阿弥作『茲江戸小腕達引』(ここがえど こうでのたてひき)、通称『腕の喜三郎』の主人公は侠客、見せ場の左腕だけで大立廻りを演じるのが、新大橋(大詰「新大橋仕返しの場」)でした。


国芳「腕の喜三郎」
弘化年間(1844-48)頃 大判錦絵 山口県立萩美術館・浦上記念館蔵
「腕組みをした勝気な表情に、「強きをくじき弱きを助ける」真の任侠道に生きる男の意気地が表れている。野出の喜三郎、通称を腕(うでの)喜三郎は、その片腕を切られた際に、切れずに残った腕を思い切りよく鋸(のこぎり)で引いたというエピソードから、その名がついたもの。後先を考えない思い切りのいい伊達男には、婆沙羅(ばさら)な衣装がよく似合う。

国芳が、坊間(ぼうかん)にその名を知られる侠客たちを選んで姿絵に表したもので、全部で10図が知られている。くるりとした大きな目にきりりと締まった顔立ちは、いわゆる歌川流には違いないが、しかしながらそれでも国芳だけにしけ描き得ない、江戸っ子の勇気がこの図にはある。
(新潮日本美術文庫22『歌川国芳』(新潮社, 1998)20頁)


(2)

新大橋は隅田川に架かり、中央区と墨田区を結んでいます。



東京メトロ「水天宮」駅で下車、新大橋通りを10分ほど歩いたでしょうか、橋が見えてきますが、手前の上に高速道路があって全体が見えません。ここでも景観は無視されたようです。



支柱に由来やら、新大橋の浮世絵などのレリーフがありますが、「新大橋の由来」はよく読めません。




次は広重の「江戸名所百景 大はしのあたけの夕立」(部分)よくできていますね!

 
(菊池貞夫著『浮世絵』カラーブックス 21(保育社, 1987) 91頁)



反対側に渡ります。






橋を渡って右へ行き、隅田川テラスに下ります。両国橋の方へ向かいながら、何度か振り返ってシャッターを切ります。



 
   
(3)

『茲江戸小腕達引』の初演は文久3(1863)年、江戸・市村座。

昭和59(1984)年4月、国立劇場小劇場で3幕8場の通し狂言として、中村吉右衛門(腕の喜三郎)主演で上演されました(第126回歌舞伎公演)。

しかしその後はどこの舞台にもかかっていないようです。

ちなみに腕の喜三郎の墓が、南千住の回向院にあります。
   


お読みいただきありがとうございました。

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(2019年5月5日撮影)
 
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