歌舞伎の舞台名所を歩く

  深川閻魔堂
『髪結新三』


 (1)

河竹黙阿弥作『梅雨小袖昔八丈(つゆこそで むかしはちじょう)』、通称「「髪結新三」の3幕目は「深川閻魔堂の場」です。

かどわかされた白木屋のお熊を取り戻そうとして、新三の長屋で辱しめられた弥太五郎源七は、遺恨を晴らそうと待ち受けます。それを知った新三…、二人の台詞は黙阿弥得意の七五調の台詞で酔わせます。
 
  新三 ちょうど所も寺町に、娑婆と冥土の分れ道、その身の罪も深川に橋の名さえも閻魔堂、鬼といわれた源七が爰で命を捨てるのも、餓鬼より弱い生業(しょうべえ)の地獄のかすりを取った報いだ、手前もおれも遊び人、一ツ釡とはいいながら黒闇地獄のくらやみでも亡者の中の二番訳、業の秤にかけたらば貫目の違う入墨新三、こんな出会もその内にてっきりあろうと浄玻璃の、鏡にかけて懐に隠しておいた此の匕首、刃物があれば鬼に金棒、どれ血塗れしごとにかゝろうか。

源七 いかにところが寺町とて、まだ裏盆も来ねえのに、聞きたくもねえ地獄の言立て、無常を告げる八幡の死出の山鐘三途の川端、あたりに見る目嗅ぐ鼻の人の来ぬ間にちっとも早く、冥途の魁(さきがけ)さしてやろう。
 (『名作歌舞伎全集』第11巻、253-54頁)
 
   深川の夏のけしきとなりにけり閻魔堂橋に夜の雨降り 吉井勇


(2)

新三の台詞にある閻魔堂橋は埋め立てられて今はもうありませんが、深川閻魔堂の前にあったそうです。



地下鉄東西線「門前仲町」で下車、6番出口を出ます。清澄通りを高速道路が見える方向へ歩くと、5分もかからずに閻魔堂に着きます。



「賢台山法乗院 深川ゑんま堂」とあり、正式な名がわかります。真言宗だそうです。



「深川のお閻魔さま」として、親しまれてきました。



門も独特で、



入って左手の建物に閻魔大王が祀られています。御開帳は1日と16日。



狭い境内に(何故ここに、と思いますが)「曽我五郎之足跡」とあるのは一興です。




関連で、また上演については、「永代橋」をご覧ください。



お読みいただきありがとうございました。

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(2018(平成30)年7月24日)
 
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