歌舞伎の舞台名所を歩く

  墨染寺
『関の扉』


 (1)

歌舞伎舞踊『関の扉』(せきのと)、関兵衛(実は天下を狙う大伴黒主)が桜を切って護摩木となさんとするところへ墨染が現れます。

関兵 「この斧の刃を試むるは幸いなるあの琴」
「ハテ心得ぬ この片袖を手に取れば 我が懐中の勘合の印 桜の精へ飛び去りしは いよいよ怪しきこの桜木何にもせよ ソレ」

幻しか深雪につもる桜かげ、実は朝には雲となり 夕には又雨となる 巫山の昔目のあたり 墨染が立ち姿
 …

関兵 「ヤア いずくともなく見馴れぬ女 この山蔭の関の扉へ いつの間に
    どこから来たのだ」
墨染 「アイわたしゃアノ 撞木町から来やんした」
関兵 「ムウ 何しに来た」
墨染 「逢いたさに」
関兵 「そりゃ誰に」
墨染 「こなさんに」
関兵 「ナニ おれに そりゃなぜ」
墨染 「色になって下さんせ」

      (中略)

関兵 「それは近頃忝ない 時に太夫さん お前のお名わえ」
墨染 「アイ墨染といいやんす」
関兵 「ナニ墨染……あの桜の名も 元は墨染
(演劇界増刊『歌舞伎名作舞踊』(演劇出版社, 平成3)145頁)

墨染寺が舞台になっているわけではありませんが、故事古歌が多く引用されているこの舞踊、桜の精「墨染」は、墨染寺に伝わる伝説を下敷きにしているに違いありません。そこでこの古刹に行ってみることにします。

(2)

墨染寺は京阪電車「墨染」駅から歩いてすぐ左手にあります。
















三代目と四代目の墨染桜




満開の墨染桜、いつかぜひ見てみたいものです。

   


お読みいただきありがとうございました。

 「関の扉」については「逢坂の関址」をご覧ください。
 「歌舞伎の舞台名所を歩くHOME
(2019(平成31)年3月25日撮影)
 
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