歌舞伎の舞台名所を歩く

  助六の塚
『助六所縁江戸櫻』


歌舞伎十八番『助六所縁江戸櫻』(すけろくゆかりの えどざくら)、助六の威勢のいい啖呵を聞いてみましょう。

助六
いかさま、この五丁町へ脛(すね)を踏ん込む野郎めらは、おれが名を聞いておけ。まず第一おこりが落ちる。まだよい事がある。大門をずっと潜ると、おれが名を手の平へ三遍書いて嘗(な)めろ、一生女郎に振られるということがねえ。見かけは小さな野郎だが肝(きも)が大きい。遠くは八王子の炭焼売炭(すみやきばいたん)の歯っかけじじい、近くは山谷(さんや)の古(ふる)やりて梅干婆アに至るまで、茶呑み話の喧嘩沙汰、男達の無尽のかけ捨て、ついに引けを取ったことのねえ男だ。江戸紫の鉢巻に、髪は生締め、ソレ、はけ先の間から覗いて見ろ、安房上総が浮絵のように見えるわ。相手が殖えれば竜に水、金竜山の客殿から目黒のめんぞうまで御存じの、江戸八百八丁に隠れのねえ、杏葉牡丹の紋付も桜に匂う仲の町、花川戸の助六とも、また揚巻の助六ともいう若い者、間近く寄ってしゃッつらを拝み奉れエゝ。
(『名作歌舞伎全集』(創元社, 1969)第18巻, 158頁)

「助六の塚」が易行院(いぎょういん)にあります。



「易行院」は東武伊勢崎線(スカイツリーライン)の「竹ノ塚」駅より歩いて約15分ほど。浄土宗のお寺で、山号は日照山。

門を入るとすぐ左にお地蔵さんが見えますが、ここにあります。







浮世絵にも多く描かれてきました。次は髭の意休とのセット。



三代歌川豊国(国貞)「梨園侠客伝 花川戸すけ六」文久3(1863)年 大判錦絵



三代歌川豊国(国貞)「梨園侠客伝 鬚のゐきう」文久3(1863)年 大判錦絵
(以上2枚は渡邊晃著『江戸の悪 浮世絵に描かれた悪人たち』青幻舎, 2016 より)



 (『江戸の華 歌舞伎絵展』図録(東武美術館, 1999)107頁より)

演劇博物館で開催された「八代目 市川團十郎展」のちらしを飾ったのも「助六」でしたし、長谷川昇の十一代目を描いた名画もあります。



展覧会チラシ

同じ歌舞伎十八番の中でも、『勧進帳』ほどは上演されず、襲名披露とかの特別な場合にしか舞台にかからない屈指の大曲です。

海老蔵の助六と雀右衛門の揚巻
河東節開曲300年記念公演 2017年3月 歌舞伎座(『演劇界』2017年5月号より)




なお、花川戸公園には「助六歌碑」があります。こちらを、
『助六所縁江戸櫻』の舞台は「吉原」、こちらもご覧ください。 


お読みいただきありがとうございました。

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(2017年2月4日撮影)
 
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